かわいい君まであと少し
 望月課長に気が付けれないようにスマホを取り出し、画面の中に二人を閉じ込めた。
 いい感じじゃない。
「あ、怜子、勝手に撮っただろう」
「悠太さんだって、勝手に撮ってるでしょ。私も絶対一緒に写ってるし」
 私が“悠太さん”と呼ぶたび、望月課長はうれしそうな顔をする。
 人って、こんな単純なことで笑顔なってくれるんだなと思った。そして、その笑顔のために“悠太さん”と呼んでみたくなる。
「怜子、もう食べないのか?」
「あ、はい。ボリューム満点のおにぎりでお腹いっぱいです。おかず食べたければどうぞ」
「もらう」と言って、私の手からお弁当箱を受け取り、残り少ないおかずを全部食べてくれた。
 志穂ちゃんもお弁当を綺麗に食べてくれた。
 最後に三人で「ごちそうさま」と言って、空になったお弁当箱を片づけた。
 ベンチで少し休んだあと、フラワーガーデンへ向かった。
 フラワーガーデンはまるでヨーロッパのお城にある庭みたいだった。志穂ちゃんは好きな花を指さしては、私に「すき?」と聞いてきた。
「うん。きれいなピンク色の花ね。私も好きよ」
「すき、しほ、れい」
 そう言って、また次の花を見つけては同じ質問をする。
 志穂ちゃんはピンク色、黄色、赤色の花が好きみたいだ。女の子なら好きになる色かもしれない。大人になった私でも、その三色は未だに好きな色だ。
 フラワーガーデンを出て、少しだけ日本庭園を歩くと三時半になっていた。
 志穂ちゃんも歩き疲れたのか、ベビーカーに座って眠そうな顔をしている。

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