かわいい君まであと少し
 テーブルを端に寄せて、もう一組布団を敷いて志穂ちゃんの寝床を確保した。
 湯船にお湯が溜まる間に着替えを準備していた。
「はっ」
 突然の声に何かと思えば、望月課長が起きたらしい。
「あ、ごめん。寝てた。これからお風呂?」
「はい。私が入れるんで、まだ寝てていいですよ」
「いや、俺が入れる。今日で最後だし」
「そうですね」
 お互い慣れた手つきで志穂ちゃんをお風呂に入れた。
 いつものように布団を掛けても志穂ちゃんがなかなか眠ってくれない。昼寝が少し長かったのかもしれない。
 お腹あたりをトントンとリズムを刻むように優しく叩く。志穂ちゃんを初めて預かった日にしたようにした。
 平日は横になるとすぐに寝てしまっていたため、これをやっていなかった。
 効果があったのか少しずつ瞼を閉じていった。そして小さな寝息が聞こえてくる。
「よかった、ちゃんと寝てくれましたね」
「ああ。志穂を寝かしつけるも今日で最後か」
「そうですね」
「昨日、聡が別れ際に涙目になった気持ちがわかるな」
「はい」
 私たちは志穂ちゃんの寝顔を見つめた。
 この寝顔を見られるのも今日で最後か。
「怜子、今日は泊っていかないか?」
「えっ?」
「変な意味じゃないから」
「わかってますよ。志穂ちゃんがいるのに変な気を起こすような人じゃないことぐらいは理解しますから」

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