かわいい君まであと少し
 付き合ってもいないのに、聞いたらまずかったかな。
「四年前、高熱出して廊下をふらふらしながら歩いてたんだ。仕事が立て込んでて休むわけにもいかなくて、無理して仕事していた。たまたま通り掛った人が医務室にまで連れて行ってくれたんだ。俺は薬だけもらって、また仕事に戻うとした。そしたら医務室の先生よりも先に、付き添ってくれた人が怒ったんだよ。仕事よりも自分の体を大事にしてください。今日明日ぐらい休んでも部署内でフォローできます。でも、もし無理が祟って入院になったらどうするんですか。そっちのほうがよっぽど困るんですよって」
 その話を聞いて思い出した。あの頃は社員研修をしている時期で、まだ配属部署が決まっていなかったときだ。
 背の高い人が具合の悪そうに歩いていたから、医務室に連れて行って、それで怒ったのも覚えてる。あれ望月課長だったんだ。
「首にかけてる社員証を見たらまだ仮の奴で、そこに藤崎怜子って書かれていた。まさか新入社員に怒られるとは思わかったよ。だから怜子が営業部に配属されてチャンスだと思った。それなのに松本が上手い具合に怜子の彼氏になってた時は結構ショックだったぞ」
 告白された日に「結構一途なんだ」って言っていたけど本当だったんだ。
「四年前、何で怜子に声掛けなかったんだろうって後悔したんだ。次に、もしチャンスが俺に回って来たならその時は全力で行こうと思った。で、今、そのチャンスが俺に来てるんだ。次はない。きっと最後だと思うから。俺はあきらめないから」
 そう言い切ると「もう寝る」と言って、望月課長は一言も話さなかった。

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