かわいい君まであと少し
「だから、ここに数値を打ち込むだけなのに、なんで間違えるの」
 入口付近のデスクから同期である由加里の声が聞こえてきた。
 由加里は今年入社の江口君の指導係をしている。
 最近のニュースやネットでも話題になっているが、パソコンの使えない若者が増えているという話。スマホやタブレット端末の普及でパソコンを使う機会が減っているらしい。
 そんなニュースを見て、さすがにそんな人そう居ないだろうと思っていた。
 でも、今年入社の人たちの中にそういう人間が居たのだ。
 まずエクセルが使えない。
 コントロールパネル、ヘッダー、フッター、ブラウザ、ポータルサイト、キュレーションサイトといったパソコン用語、ネット用語がわからない。
 レポートや論文のおかげで、ワードくらいは使えるが、ブラインドタッチができない。
 それを由加里から聞いて唖然とした。
 由加里は仕事と一緒にパソコンの操作も教えないといけなく、指導係を初めてまだ二週間でありながら、すでに疲れたと嘆いている。
 このようなことが他の部署でも起きているらしく、来年の新人研修からパソコン操作の指導も含まれることになったらしい。

「怜子、お昼行こう」
 疲れた顔の由加里が私のところに来た。その後ろにはなぜか江口君がいた。
「江口君も一緒?」と由加里に小声で聞いた。
 由加里は「えっ」と言って、後ろに目を向けた。
「江口君、何してるの?」
「僕も一緒に行きたいです!」

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