かわいい君まであと少し
 犬のような人懐っこい顔で、江口君は言った。
 江口君に好かれてるな、由加里。
「残念。今日は昼の女子会なの。男子禁制。ほら、怜子行こう」
「うん」
 由加里に手を引っ張られ江口君の横を通り抜けた。そのときの江口君は寂しそうな顔で由加里を見ていた。
 会社の近くのカフェに入り、サンドイッチとフライドチキンの盛り合わせとアボガドサラダを頼んだ。
 お昼時のため、人は多いがすんなり席に通してもらえた。小さな二人席のテーブルに向かい合って座った。
 観葉植物がたくさん置かれている店内は植物園を彷彿させる。
「ねえ、いいの、江口君」
「いいよ。お昼ぐらい、ゆっくりしたい」
「でも、江口君、由加里に懐いてるんだね」
「そう? 私は手の掛かり過ぎる後輩で参っているけど」
「でも、反抗的な手の掛かる後輩より、従順な手の掛かる後輩のほうが楽だと思うよ」
 由加里はアボカドサラダを頬張りながら、同意するように小さく頷いた。
「ところで引っ越しの準備はどう? 進んでる?」
「うん、順調。これを機に、要らないものバンバン捨ててる。超身軽になろうと思って」
「へえー。松本別れてからのほうが、怜子、生き生きしてるね。クマは目立つけど」
「それは言わないで。夜遅くまで荷物の整理してるから少し寝不足で」
「ほどほどにしなさいよ」
「はーい」
 ここのサンドイッチはたくさんの具材が挟まっていて、お皿にも大盛りとまでは言わなくても女性二人が食べるには充分な量だ。アボガドサラダも同じくって感じで、由加里と外でお昼を食べるときは必ずここのカフェになる。

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