かわいい君まであと少し
 ◆ ◆ ◆

「もしもし、怜子?」
「お姉ちゃん、こっちの荷物が積み終わった。これからそっちに行く」
「そう、わかった」
 電話を切り、竹井さんが運転する車に乗り込んだ。後ろには引っ越し業者のトラックが待機している。
「お義兄さん、引っ越しの手伝い、ありがとうございます」
「いいよ。怜子ちゃんのお役に立てるならね。それにしてもいいね、オニイサンって呼び方。こんなかわいい妹ができるなんて」
「私もこんな優しい兄ができて、とてもうれしいです」
 姉と竹井さんの結婚が決まってからは“お義兄さん”と呼ぶようになった。
 今までは“竹井さん”と名字で呼んでいた。姉が“智弘さん”と呼んでいるのに、妹の私も“智弘さん”と呼ぶのはちょっと違う気がしたからだ。
 午後からの引っ越しだったが、業者さんの手際のいい仕事のおかげで思ったより早く向こうのアパートへ行くことができた。
 しかも竹井さんがこっちに来てくれたからかなり助かった。
 業者さんの対応は竹井さんがほとんどやってくれて、私は大きな家具があった場所の掃除や最終確認ができた。
 車とトラックが引っ越し先のアパートの前に着いた。姉はトラックの音に気がついたらしく、階段から下りてくる姿が見える。
「ここの二〇二号室にお願いします」
 業者さんは「はい、わかりました」と言って、カラーボックスなどの大きめの家具から運び始めた。
「思ったより早かったわね、来るの」と、竹井さんの隣に立った姉が言った。
「うん。運び出す荷物も少なめだったし、お義兄さんがうまくやってくれたから」
「そう。智弘さん、車とりあえず駐車場にいれたら」
「そうだね」

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