かわいい君まであと少し
花をぐるっと囲っているレンガの外側に咲いているタンポポを指さした。
「タンポポだよ。黄色くてかわいいでしょ?」
志穂ちゃんは人差し指を突き出して、タンポポにゆっくりと触れた。それは知らないものを知ろうとしている感じがした。
初めて触れたタンポポを志穂ちゃんはどんなふうに感じたのだろう。
私も志穂ちゃんと同じように人差し指でタンポポに触れた。柔らかい感触が広がる。なんだか懐かしい感じがした。
志穂ちゃんの指がタンポポから離れる。そして、私の顔を見て微笑んだ。
「かわいいね」
一緒に花を眺めていると、横からカシャッという音がした。その音のほうを見ると望月課長がスマホを構えていた。
「今、撮ったのは志穂ちゃんだけですよね?」
「いや、二人一緒。そんなにくっ付いていて、志穂だけ撮るほうが無理だろ」
「それなら声掛けてくださいよ。あの、なんで写真を撮ってるんですか?」
「妹に頼まれた。時間があるときにでも、メールで送ってほしいって」
望月課長は話しながら、まだ写真を撮っている。志穂ちゃんはスマホにもカメラにも興味がないみたいだ。
「いつまで撮ってるんですか。私が写っていないのを送るようにしてくださいね」
「わかってるよ。怜子、敬語。それと悠太」
まだ言ってるよ。
「はい、はい。望月さん」
望月課長は「照れなくてもいいぞ」と言って、スマホをしまう。そしてパーカーのポケットからビニールでできた野球ボールサイズの赤いボールを出した。
「志穂、ほら」と言って、志穂ちゃんのほうへボールを転がした。
「タンポポだよ。黄色くてかわいいでしょ?」
志穂ちゃんは人差し指を突き出して、タンポポにゆっくりと触れた。それは知らないものを知ろうとしている感じがした。
初めて触れたタンポポを志穂ちゃんはどんなふうに感じたのだろう。
私も志穂ちゃんと同じように人差し指でタンポポに触れた。柔らかい感触が広がる。なんだか懐かしい感じがした。
志穂ちゃんの指がタンポポから離れる。そして、私の顔を見て微笑んだ。
「かわいいね」
一緒に花を眺めていると、横からカシャッという音がした。その音のほうを見ると望月課長がスマホを構えていた。
「今、撮ったのは志穂ちゃんだけですよね?」
「いや、二人一緒。そんなにくっ付いていて、志穂だけ撮るほうが無理だろ」
「それなら声掛けてくださいよ。あの、なんで写真を撮ってるんですか?」
「妹に頼まれた。時間があるときにでも、メールで送ってほしいって」
望月課長は話しながら、まだ写真を撮っている。志穂ちゃんはスマホにもカメラにも興味がないみたいだ。
「いつまで撮ってるんですか。私が写っていないのを送るようにしてくださいね」
「わかってるよ。怜子、敬語。それと悠太」
まだ言ってるよ。
「はい、はい。望月さん」
望月課長は「照れなくてもいいぞ」と言って、スマホをしまう。そしてパーカーのポケットからビニールでできた野球ボールサイズの赤いボールを出した。
「志穂、ほら」と言って、志穂ちゃんのほうへボールを転がした。