かわいい君まであと少し
「私は志穂ちゃんの様子が見られるように、後部座席に座りますね」
「そうしてくれ」
 望月課長はトランクにベビーカーを畳んで入れた。
 そして運転席に望月課長が座り込み、後部座先にいる私たちのほうを見た。
「志穂はどうだ」
「大丈夫ですよ」
「もし志穂が車酔いとかしたらすぐに言ってくれ」
「はい。志穂ちゃんって車酔いしやすい子なんですか?」
「妹が言うには、大丈夫らしい」と、座席やルームミラーの位置を直しながら、望月課長が言った。そして、望月課長は車を発進させた。
 望月課長の運転は安全運転で、急ブレーキや無理な車線変更などが全くなかった。
「運転、よくするんですか?」
「ああ。気分転換でよくするよ」
「へえ」
「怜子は?」
「私はほとんど運転しないですね。自分の車を持っていないと、運転する機会って減っちゃうんですよ。月に一、二回ぐらい運転すればいいほうです」
 望月課長は「まあ、そうなるか」と言って、ルームミラー越しにこっちを見た。
 一瞬、視線が合い、私は志穂ちゃんのほうへ視線をずらした。志穂ちゃんはおとなしくウサギのぬいぐるみを抱っこしている。
「志穂ちゃん、ウサギさんと仲良しね」
 ぬいぐるみの手を握って軽く上下に揺すると、反対側の手を志穂ちゃんが掴み同じように上下に揺らした。
「ウサギさん、すごく楽しそうだね」
 志穂ちゃんと遊んでいると、望月課長が「そろそろ着くぞ」と言った。

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