かわいい君まであと少し
 とあるマンションの地下へと車は進む。どこにでもありそうなグレーの外壁のマンション。お客様専用駐車場と示されている駐車スペースが三つあり、そのうち二つが埋まっていた。
「よかった、空いてて」と言いながら、望月課長は車を停めた。
 そして荷物を持ち、志穂ちゃんの手を引きながらエントランスへ向かう。オートロックを解除してもらい中に入った。
 エントランスでの望月課長とのやり取りを聞いて、随分と親しい人なんだなと思った。
 三一一号室の前に着くと望月課長がインターフォンを鳴らした。
 ドアの中から現れたのはいかにも保育士という感じのするお兄さんだった。
 濃紺と白のギンガムチェックに向日葵やコアラのアップリケが縫い付けられているエプロンをして、長身を軽く屈めながら笑顔で「こんにちは」と言った。
 うたのお兄さんみたい。
 彼に促され、望月課長が先に部屋に上がった。志穂ちゃんの靴を脱がしてから、自分も後に続いた。望月課長が志穂ちゃんを抱きかかえると、彼はリビングのへと続くドアを開けてくれた。
「先輩、お久しぶりです。子供がいたなんて知りませんでした」
 彼は楽しそうに冗談を言った。
「姪だ」
「あは、そうでしたね。でも、そうしてると親子にしか見えないですよ。しかもペアルック」
 その言葉に思わず噴き出してしまった。今朝、同じことを思ったからだ。
 望月課長がこっちを見てから「今朝、怜子にも同じことを言われた。服はたまたまだ」と彼に付け加えた。

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