かわいい君まであと少し
 社内でも人にも自分にも厳しいと言われている常務の娘さんだけあって、立ち姿も綺麗だった。
 そのため、数日で“望月課長がお見合いをした”という噂は“望月課長にかわいい彼女ができた”に変わった。

 あの屋上でのことは夢と思おう。それが一番いい解決方法だと思う。そうすれば、こんな“うそつき”と思ってしまう感情もなくなる。
 それ以前に私がこんなふうに考えること自体が間違っている。ごめんなさいと言ったのだから。中途半端な感情が渦を巻いている原因はわかっている。
 全部自分が決めたことで、ただ気が滅入るようなことが連続して起きただけ。ちょっとタイミングが悪かった。だから、どうしようもないことを考えてしまうのだ。
 重い足取りで電車に乗り、最寄り駅で降りる。駅前のスーパーに寄って夕ご飯の買い物をすることにした。
 何かを作るのも面倒で手軽なお惣菜をカゴに入れた。
 好きな人と食事をしたのはいつだろう、と考えて虚しくなった。数日とか数ヶ月とかそんな生易しい時間ではなかった。二年だった。もう情けない。それ以外の言葉が全く見つからなかった。
 早く買って帰ろう。
 時間帯のせいかレジは少し混んでいた。鞄からスマホを出すと画面には着信の通知があった。それは久しぶりの姉からの電話だった。
 家に帰ってから電話しよう。
 ちょうど財布を出したとき自分の番が回ってきた。
 急いで家に帰り、部屋着に着替え、夕ご飯を食べながら姉に電話をした。

< 6 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop