かわいい君まであと少し
 数秒待つと「もしもし、怜子?」という、いつもと変わらない声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、久しぶり。どうしたの?」
「彼氏とは上手くいってる?」
 その言葉に固まった。
「あの……、別れた」
 数秒の沈黙の後、姉は「そっか」と静かに言った。
「あんまり驚かないんだね」
「最近、スマホを機種変じゃなくて新規で番号変えたから何となくね」
「うん、大当たり。でも、別れたのは向こうの浮気だから。今回が初めてじゃないし」
「はあ?」
 さすがに何回か浮気をしている彼氏だったというのはびっくりしたらしい。
 私は彼氏との顛末を話し始めた。

 同期で入社した私と松本は歓迎会で意気投合し、仕事帰りに飲み歩く飲み仲間になった。
 慣れない仕事に対しての愚痴を吐き出し合い、当たり前のように休みの日も一緒に出かけるようになった。
 そして当たり前のように彼氏彼女の関係に変化した。
「晃、今度映画観に行かない」
「今度の休み、大学時代の友達がこっちに遊びに来るから、ちょっと無理。ごめんな」
「そっか。昨日から始まったばかりの映画だから別の日に観に行こう」
「そうしよう」
 松本のことを職場以外では名字ではなく名前で呼ぶのも馴染んできたころだった。
 やたら大学時代の友達と遊ぶようになり、デートを何度も断られるようになった。
 そのときは深く気にしていなかったし、三カ月ぐらいでいつものように休みの日はいつも一緒に居てくれた。
 そして付き合いだして一年半が過ぎた頃だった。

< 7 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop