かわいい君まであと少し
「それに、志穂ちゃんの面倒を一緒に見ているのは成り行きなんです」
「成り行き、ですか」
「はい。あの、昨日、望月課長が引っ越したこと知ってますか?」
 聡さんは「昨日のメールで知りました」と言って、フライパンを渡してきた。
「実は私も昨日引っ越ししたんです。で、すごく偶然なんですけど、私と望月課長がお隣さん同士になっちゃったんです。で、志穂ちゃんのお母さんが望月課長に志穂ちゃんを預けるところに、たまたま遭遇して、泣き止まない志穂ちゃんを一緒にあやしていたらこういう状況になったんです」
「そうなんですか」と、聡さんは納得していた。
「先輩、料理全くダメですよね。怜子さんが作ってるんですか?」
「はい」
「じゃあ、とりあえず志穂ちゃんを預かるこの一週間は先輩と一緒に?」
「まだ詳しくは話し合ってはいないんですけど、たぶんそうなるかな。食事のことを考えると心配ですから」
 聡さんは「なら、先輩にチャンスがいっぱいありますね」と言って、拭き終わった調理器具やお皿をしまい始めた。
「いや、それは」
「僕は先輩も怜子さんも応援しますよ」
 ちょっと意味がわからない。
 とりあえず、この話から離れようと思い「あの、どうして子供の用の食器やおもちゃがあるんですか」と聞いてみた。
「僕、兄がいるんです。兄は結婚していて、五歳の女の子がいるんです。奥さんが、今妊娠三カ月で悪阻がかなり酷いんですよ。それで時々、僕が姪を預かっているんです。あと、仕事用かな」

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