放課後、キミとふたりきり。

立てるか? と差し出された手をおそるおそるとる。

壊れ物でも扱うかのように支えられ、夢を見ているような心地で矢野くんを見つめる。


夢を見ているような、じゃなく、本当に夢なんじゃないだろうか。

だって、矢野くんにはずっと嫌われているはずだった。

いつもイライラさせて、あきれさせて、ため息ばかりつかせていたんだから。

だからこんな風に、矢野くんがわたしに優しく微笑んでくれるなんて、あるわけない。



「もう逃げないか?」

「う、うん……」

「じゃ、悪いけど教室まで付き合ってくんね? 俺鞄持ってきてない」



確かに矢野くんはアルバムしか手に持っていないし、おまけに靴は上靴のままだ。

相当慌てて追いかけてきてくれたんだなと、くすぐったい気持ちになる。


てっきり離されると思った彼の手は、そのまま腕からするりと下がり、少し迷うような素振りを見せたあとわたしの手をとった。



「あ、あの。もう逃げないよ……?」

「わかってる。これは……まあ、なんだ。なんつーか、俺がしたかっただけ」
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