焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
通りを行き交う車の騒々しいクラクションに掻き消されまいとするように、勇希が大きく声を張った言葉は、まったくブレることなく私の耳にも飛び込んで来た。


その言葉の意味を探して、顔が強張るのが自分でもわかる。
向かい合ったまま黙り込む私と勇希を、たくさんの人が通り過ぎながら振り返って行く。


「ま、待って、勇希」


なんて言えば、勇希の言葉を覆すことが出来るだろう。
ただそんな焦りに駆られて、混乱しながら無意識で声を発した。
掠れてとても聞き取り辛い私の声に、勇希が黙って一歩近付く。


「お願い、待って……」


動揺して震える声を自分で聞きながら、私は額に手を当てた。
すぐ目の前で私を見下ろす勇希を、泣きそうになりながら必死に見上げる。


「私、私、勇希のこと……」


こんなタイミングで言い出すのは間違ってると思う。
今度は勇希の方から別れを切り出された。
なのに、今、『好き』だなんて。
縋ってるようにしか思えない。


なのに……。


「だから、智美。結婚しよう」


更に降って来た力強い声に、今度こそ本気で絶句した。
自分の耳が信じられなくて、大きく目を見開く。
瞳いっぱいに映る勇希が、はにかむような照れ笑いを浮かべた。
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