焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
実際に表彰された社員がその後なんらかの形で階級昇格している統計結果があるし、もちろん勇希もそうなるだろうと思っていた。
そして、実際に佳代の口から漏れ聞いてしまうと、良かったと思う反面、複雑な気分も湧き上がる。


キッチンで佳代がコーヒーを淹れているのがわかる。
インスタントだけど香ばしい香りが漂って、私はボソッと呟いた。


「……期待も何も。私、勇希に別れるって言ってきたし」


それに対して、佳代が苦笑しながら部屋に戻って来た。
同じ柄のマグカップを二つ手にしている。


「またまた~。智美、先月来た時も、最初は『もう別れる!』って言ってたじゃない」


マグカップを一つ私に手渡してくれながら、佳代は涼しい顔をして私の向かい側にペタンと座る。
カップに息を吹きかけて冷ます様子を見ながら、私もそこは自分を戒める。


確かに……勇希と喧嘩して佳代の部屋に転がり込む度に、感情的になっている最初の数日はそう連発していたのは否定出来ない。
そして結局、一週間やそこらで勇希が迎えに来ると、私はおとなしく連れ帰られていた。


本気の時には信じてもらえない。
これも童話にある狼少年に通ずるアレだろう。


だけど。
本気でこの先を考えるのなら、これがいいタイミングだと判断した自分を正しいと思う。


「うん。……だから今度は本当に、ここらでちょっと別れてみようと思って」
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