焦れきゅんプロポーズ~エリート同期との社内同棲事情~
一緒にいてもお互いに勝手なことをしていて、惰性で会話を交わすだけ。
むしろ『恋人』だったはずのこの半年の方がただの『ルームメイト』だったみたいだ。


そりゃあただの空気にもなるわ。
恋人って感覚も忘れるわ、と自分でも納得する。


「……シャワー、浴びてくる」

「行ってらっしゃい」


勇希の短い言葉に送り出されて、私はバスルームのドアに手をかける。


タオルをしまってある場所も、シャワーの使い方も当然知ってる。
三年間恋人として暮らした馴染みきった空間だ。
ルームメイトという新しい関係で過ごすには、知り過ぎてる分、たまらなく違和感がある。


少し強めに出したシャワーを頭からかぶる。
身体にこびりついた汚れと疲れが剥がれ落ちて行く気持ちよさ。
頭の中がすっきりとクリアになっていくように感じながら、私は心に靄が立ち込めるのを感じていた。


勇希はどうして別れに納得出来ないんだろう。
恋人なんて名ばかりの色気も素っ気もない無意味な関係を終わらせることを、どうして拒むんだろう。


キュッと音を立ててシャワーコックを捻った。
お湯が止まって、私は濡れた髪を後ろに流しながら顔を上げる。


私が申し入れた『別れ』を、勇希に納得してもらうには、何をどう話せばいいんだろう。
この奇妙なルームシェアをいつまで続ければいいんだろう?


お互いの心の奥底で地に固まってしまっている恋心は、最下層から這い上がってくることはないとわかっている。
長引けば長引くほど、無意味でしかないのに。
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