先生、恋ってなんですか?

口を閉ざした私に、不思議顔のバイト君。

「あれ?ちがいました?」

違うというか、何て言うか……

「や、そもそも好きって感情が良く分からない。から、誰も彼も恋愛対象じゃあないよ」
「あ、そうなんですか。ま、どっちにしろ店長チャレンジャー」

なんてぶつぶつ呟いて、バイト君は仕事に戻っていく。
私、ここ最近、目まぐるしく展開する状況変化についていけない。




そして時刻は11時。
がらりと扉が開いて先生が現れた。

「おぅ、先生!久しぶりだなぁー」

声をかけられて、お久しぶりです、とカウンターまでやって来て腰かける。

「あ、生を。あと唐揚げと、今日の一品下さい」

店長に注文して、店長もそれに従い注文をこなしていく。キッチンにいた私は先生の姿を捉えて、オーダーが通される前にすでに動いていた。
フライヤーでからりと揚げた唐揚げの横に大根おろし。
さらに大根おろしの上から和風タレ。
刻んだネギを散らして仕上げ。
よし、完璧。

「やけに早いな?」
「だって、いつも同じですもん」
「……そうか」
「そうですよ」

仕上げてカウンターに持っていくと、店長に絡まれた。
その微妙な顔するのやめてほしい。

先生、食べに来るからご飯要らなかったのか。
……そうか、下野さんに会いに来たのかな?
あれで律儀なんだから。

私はクスクスと笑いながら、さっさとキッチンに戻ったけれど、店長はまだカウンターでしゃべってる。
誰の店だ、といいたくなるときもあるけれど、店長が誰より働いているのを知っているし、まぁお客さんの相手をするのも仕事のうちだとやりすごす。
仕方がないなぁ。


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