先生、恋ってなんですか?
「お疲れさまでーす。お先失礼しまーす」
12時を回り、仕事にキリをつけて着替えに走る。
今日はちょっと遅くなったなぁ。
さっき先生は会計してた。
きっと、私のことを見計らっていたんだろう。
自分がご飯を食べに来たときくらいは、私のことなんて気にしなくて良いのに。
きっと待ってるんだろう。
バックヤードでちゃちゃっと着替えていると「おつかれー」と、店長が入ってきた。
「お疲れさまでーす」
「バカ、お前……!」
そう言って店長は慌ててる。
「店長、今さら」
「そういう問題じゃねぇって昼間言っただろう」
「あ、……スミマセン」
そういえば、そうだった。
でもねぇ。
「下着じゃないし、見られて減るものでもないし。まぁ見せられた方は公害かもしれないですけど」
「ったく、お前さぁ。今度鍵かけてなかったら襲うぞ」
それは穏やかじゃないなぁ。
そして店長は、ため息を盛大に吐く。
あ、これは雲行きが怪しくない。
お説教が始まる前に、早々に店長の脇をすり抜けて、お疲れさまです!と走り去る。
今度から気を付けよう。
「おい、小嶋!」
呼び止められて、仕方なく振り返ると、にやっと笑う顔がそこにあった。
企み顔が怖いよ、てんちょー。
「明日、1時に迎えにいくからな。逃げんなよ。じゃーな、お疲れ」
すっかり仕事に没頭していて忘れてたけれど、そうだった。
やたら強引に誘われたんだった。
つい1時間前には覚えてたはずなのに。
バイト君と話題にまででたって言うのに。
なんて薄情な私の頭。
「り、了解しました」
と返事をして店を後にして気づく。
異性とふたりきりで出掛けることを、世間的には“デート”と言うのではないか?
だとすると、私は明日。
店長と、デート、するらしい。