先生、恋ってなんですか?
アパートの前に、黒い軽自動車。
そこにもたれるようにして、店長が立っていた。
「おう、暑いくらいだな、今日は」
と、私を確認して笑う。
お店ではいつも制服である作務衣姿。
だから私服姿の店長は新鮮だ。
ジーパンにロンT、パーカーという格好で苦笑する。
「新鮮だな、私服姿。……似たような格好になったな」
なんて笑うから少しばかり恥ずかしくなる。
「本当ですね」
「かわいいな、お前。似合ってんよ」
ストレートな言葉に頬が熱くなる。
誰、この人。
「なに?照れてんの?かわいいな。俺は本来、好きな奴にはとことん甘やかす性格なんだよ。ま、とりあえず車乗れ」
どうしよう。
引く、とかは無いんだけど。
免疫が無さすぎて……
すでに帰りたくなってきた。
けれどそんな私の心境は知るよしもない店長はスッと私をエスコートして助手席に座らせる。
なんて手慣れてる。
とは思ったものの、まぁ35歳の男の人なんだから、女性の扱いなんて心得ていて何ら不思議はないのだろう。
世の中の女性は、こんな扱いを当然のように受け入れている人も居るってことか。
むず痒くて、落ち着かない。
店長は運転席へと回り込み、バタン、とドアを閉めて太陽に負けない眩しさで言う。
「今日はとことん甘やかすからな。覚悟しとけ?」
……これはこれで割りきるのが、一番楽なのかもしれない。