俺様上司は溺愛体質!?
(だけどなんだか苦しそう……。)
自分に何ができるわけでもない。けれど意識は自然と彼の方へ向いてしまう。手を差し伸べたくなる。
「あの……」
一歩踏み出したちとせに向かって、冷たい声が響いた。
「盗み聞きか、萩原」
「えっ!?」
観葉植物の隙間からこっちを見る真屋時臣と目が合った。
「違います! エレベーターを降りたらたまたま声が聞こえて……だけど、すみません……」
わざと聞いたわけではないのだが、まさか盗み聞きと言われるとは思わなかった。
しおれるちとせを見て、真屋時臣はかけていた眼鏡を外し、目頭を指でつまんだ。
「いや、悪い。今の言い方はなかった」