小話置き場
汐見先輩は苦笑いして「それどういう意味」とちょっと乱暴に私の頭を撫でた。
だけどふいに、その顔が真剣なものに変わった。
「最初は断ろうと思ったんだけど。面倒くさかったし、百合といる時間減るし。けど、前に君に言われたこと思い出して……たまにはいいかなって」
「……………」
嬉しい。
私の言葉を思い出してくれたこと。
嬉しいこと、なんだ。だから、今私が過去の自分の発言を後悔していることなんて、知られちゃいけない。
「えへへ、嬉しいです。ありがとうございます」
「僕の方こそありがとう」
先輩が優しく目を細めて、私を見る。
これだけ愛されてて、これ以上何を求めるっていうんだろう。
ワガママな彼女にだけは、なりたくないな。
*
次の日。
つまり汐見先輩禁止一日目だ。
昨日のことも話した上でそう言うと、チョコちゃんと里菜には「何も禁止にしなくても」と言われた。
「ううん。これを機に二週間、汐見先輩と会わないことにする。そんで、この軟弱なメンタルを鍛え直すんだ!」
そうだ、これは神によって課せられた試練なんだ。これを耐え抜き、彼女としての余裕を勝ち取ってこそ、汐見先輩の隣に並ぶに相応しい女となる。