小話置き場
「そんなになってまで我慢する必要ある?付き合ってんでしょ?好きなだけいちゃつけばいいじゃない」
電車に揺られながら、チョコちゃんのありがたいお説教を頂戴する。が、私の負けず嫌いが邪魔をして、素直に受け止めようとしない。
「……あ、汐見先輩」
里菜が開いたドアの方を見て言った。たぶん先輩が同じ車両に乗って来たんだろう。
「ほらマル、先輩だよ」
「いやだ見ない。見たら絶対話したくなる」
「話せばいいじゃん」
「負けたくないんだよ……」
「ええ〜〜……」
今まともに先輩の姿を見たら、その輝きに目を焼かれてしまうに違いない。イケメンというのは時に目に毒なのだ。
「……面倒臭いヤツ……」
心底そう思っているのだろう顔で、チョコちゃんがボソッと呟いた。超わかる。
「……なんかさ、私から話しかけるの、悔しいっていうか」
「悔しい?」
ぽつりとこぼすと、チョコちゃんがあからさまに『はあ?』という顔をする。私は唇を尖らせた。
「だってさぁ。汐見先輩、全然ヘーキそうなんだもん」
そう。
遠くから眺めて見える彼は、本当にいつも通りだ。マジでムカつくくらいに。