小話置き場
いつかに里菜が言ってたように、私は『私を好きな汐見先輩』しか知らないんだ。
『私を好きじゃない先輩』を目の前にしたとき、私はどうするんだろう。
考えて、とても怖くなった。嫌な想像だ。するだけ無駄なのに、考え始めたら止まらなくなって、さらに落ち込んだ。
*
次の日、十日目。
嫌のことがあったら寝て忘れろ主義の私だけど、今回のモヤモヤは寝ても晴れなかった。
汐見先輩が絡むと毎回こうだ。恋ってなんて面倒臭いんだろう。
とにもかくにも面倒臭い女代表の私は、結局寂しさに負けて先輩に会いに行くことにした。
昼休みはやっぱりお誘いが来なかったから、自分の教室でお弁当を食べた後、先輩の教室へ行った。
「……………」
二年三組のドアの前に立って、今更迷う。
だって一週間ぶりだし。『今日一緒に帰れませんか』って言ってみるだけなんだけどさ。ダメ元だダメ元。
……いや、嘘だ。
頼むから『いいよ』って言ってくれって思ってる。
私をいちばん好きな先輩なら、言ってくれるでしょって思ってる。真っ黒い私が、また出てきてる。
あ、どうしようかな。やめとこうかなやっぱ。
いやダメだ。いつもここで逃げるから私はダメなんだ。
根性見せろ丸岡百合。先輩を信じろ。余裕持つんだって決めただろ!