小話置き場



ぐっと弱い自分を収めて、ドアに手をかけた。ガララと勢い良く開ける。


少し目を動かして、先輩を見つけた。あ、と声を出そうとして、止まる。


彼の机の周りを、数人のクラスメイトが囲んでいたから。……もちろんその中には、女子もいて。


昼休みも勉強してるんだ……。


あ、楽しそう。

みんな笑ってる。


汐見先輩も、私といるときの笑顔こそないけど、その表情は柔らかい。


「………………」


年齢も学年もひとつしか変わらないはずなのに、彼と私の間には見えない壁が存在しているかのようだ。


今までは、全然年の差なんて感じなかったのに。


『二年生の教室にいる汐見先輩』が、突然目の前に現れたみたいな気分だった。



「……あ、あの子」


汐見先輩の近くにいた女子の一人が、ドアの側に立っていた私に気づいたらしく、目があった。


「汐見くんの彼女」


ノートに向かっていた汐見先輩の目が、ぱっと見開かれる。


もう一人の女子は私を見て、あからさまにげえっという顔をした。周りの男子は、ラッキーと言わんばかりに「おおっ」とはやし立て始める。


汐見先輩は一瞬びっくりした顔で私を見たあと、すぐに席を立って私のところへ来てくれた。



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