ヴァイオレット
それ以来、スーツの女の人は時々立ち止まってくれるようになった。

女の人だけではなく、その2日後には大学生の男の人、その次の日には大学生くらいのカップルと、気づけば雅人さんのまわりにはたくさんの人が集まるようになっていた。

いつものように私に話しかけてくれるけれど、人が集まる分話せる時間も短くなっていった。

雅人さんのみんなの心に響くようになって嬉しいと思う。

でもどんどん雅人さんが遠くなっていくようで、手が届かなくなっていくようで、私は寂しさを感じ始めていた。

雅人さんと初めて話した頃とは違う。
もう雅人さんには、たくさんのファンがいる。

私一人がいなくなったって、そんなに変わらない……。


寂しさに追い打ちをかけるように、別れは突然やって来た。

< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop