ヴァイオレット
改札に入ってすぐにある時計を見ると、時間は19時2分。
出発の時刻になっていた。

電車がとまる音がした。

どうか間に合って…

私はただただホームに向かって走る。

もう悩むことなんて何もなかった。
雅人さんにこの気持ちを伝えたい、それだけだった。

階段を登りきると、電車が止まりドアが開いていた。
でもホームにはもう、人は誰もいない。

私は車両を見渡し、雅人さんの姿を探す。

見当たらない。
どの車両にいるの?

4両目から一人一人の乗客の顔を確認していくが、雅人さんの姿は見当たらない。

電車は待ってくれるわけもなく、ドアがしまる。

諦めかけたその時、2両目の前のドアに雅人さんの姿を見つけた。

「雅人さん……っ!」

雅人さんは気づいていない。
私は動き始めた電車を追いかけ、走り始める。

「雅人さん!まさとさんっ!」

電車はどんどんスピードをあげ、私はホームの一番前でスピードを落とした。

「まさとさん…!すきだよぉ……」

私はその場に膝をつき、へたりこんだ。
結局伝えられなかった。

なんで2週間、会いに行かなかったんだろう。
ちゃんと向き合わなかったんだろう。

後悔ばかりが私の胸を駆け巡る。

私は去っていく電車の後ろを、ただただ見送っていた。

そして、左手の雅人さんからの白い手紙をぎゅっと抱き締めた。
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