ヴァイオレット
「ここに来てくれたってことは、あの曲聞いてくれたんだ」

ミュージックスタジオで流れていた、雅人さんの新曲"Violet"。
あの曲の意味は…

「"Violet"は日本語で"すみれ"…あのときの返事だよ」

雅人さんの言う"あのとき"…それは上京当日のホームのことだろう。

「聞こえていたんですね」

あのとき、駅を出発した電車の後ろから、私は雅人さんが好きだと叫んだ。
まさか届いていたなんて。

「うん、電車が動き出してから気づいたんだ。連絡先も知らないし、電車も出発していたからどうにもできなかった。…3年もかかってしまったよ」

頬を伝う涙は、確かにあたたかかった。
夢じゃないんだ。

「本当はかなり前にこの曲をかいたんだけど、ずっと披露する機会がなくて。偶然ミュージックスタジオの放送日がちょうど今日だったから、新曲として歌ったんだ」

覚えていてくれたんだ。
さすがに覚えていないと思っていた。

「3年前の今日、すみれちゃんが初めて俺に話しかけてくれたんだよ。覚えてる?」

私は首を何度も縦に振る。
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