ヴァイオレット
「想っていてもいいじゃないですか」

考えるよりも先に言葉がこぼれ落ちた。

「好きなままじゃだめだなんて法律、ないじゃないですか」

「すみれちゃん……」

「好きなままでいいじゃないですか。いつかきっと、雅人さんなら他に素敵な人が現れます。私はそれまで想っていてもいいと想います」

こんな一途な優しい雅人さんに想われている彼女は、なんて幸せ者なんだろう。

雅人さんの幼馴染みになりたい。

私が雅人さんの幼馴染みだったら良かったのに。

「私は……」

雅人さんへの想いが溢れてくる。

「私は雅人さんが……」

このタイミングで言っても私はフラレるだけだろう。
いまの私じゃ、彼女には勝てない。



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