課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 課長……もう諦めましょう。
 我々に語ることなどありません、と横目に雅喜を見る。

 雅喜もまた困り果てているようだった。

 この人が仕事で困っているの、見たことないけどな。
 いつも涼しい顔で、どんな無理難題でもこなすのに、と思うと、ちょっと可哀想になってきた。

 此処まで頑張ったのにな、と思ったとき、
「えーと、沢田真湖さん」
とレポーターさんに呼びかけられる。

「は、はいっ」
「お二人の馴れ初めは?」

「え、えーと……。
 実は、職場では、上司と部下なんですけど」
と言うと、会場からどよめきが起こった。

 雅喜が、こらっ、という顔をする。

「なので、職場ではこうして、一緒に出かけたりするの、内緒にしてるんです」

 嘘は言ってないぞ、嘘は。

 それに、なにやら、会場は盛り上がっている。

「まだ、付き合い始めなので、語れるような話はあまりないですね〜」
と照れたように言うと、

「それはそれで初々しくていいですね~」
と笑顔のレポーターの人に言われる。

「名前で呼ぶのも恥ずかしくて、つい、役職名で呼んじゃったりとか」

「ちょっと呼んでみてくださいよー」
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