夢想曲ートロイメライー

……きっと言うなら今しかない。

意を決して、ゆっくり口を開く。

「久坂さん、女でも知識があれば手当てはできるんですよ」

久坂さんは無言で聞いている。

「男も女も学ぼうという気持ちは同じなんです。学んだ事を活かしたいという志も。だからーー」

「……すまなかった」

突然、久坂さんが言葉を遮った。

久坂さんは立ち上がって続けた。

「僕は今まで、女は弱くて気が弱いもんだと思っていた。だから女が学問をしても役立つ事はないと、そう思っていた」

しかし、と久坂さんは降り返ってこちらを見る。

「間違っていたようだな。率先して傷の手当てをし、あの数相手に怒鳴り散らすなど気が弱い者にはできんだろう」

そう言って口元を緩めて笑った久坂さんに唖然とした。

今までの態度とあまりにも掛け離れている。

何と返していいか分からず戸惑っていると久坂さんは言った。

「今まですまなかった。夕霧、お前は立派な同志だな」

そう言って久坂さんは笑う。

お地蔵様みたいに優しくて、温かい笑み。

夕霧、と久坂さんが初めて名前を呼んでくれた。

ようやく認められたようで、仲間になれたようで、嬉しかった。
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