夢想曲ートロイメライー

「夕霧さん、いきなり何するんですか!」

利輔が川から顔を出して叫ぶ。

それには答えず、少し離れた場所の晋作達を指差す。

「利輔、晋作達のところまで競争よ。負けたらお団子奢ってもらうから」

そう言い終わると同時に、水を蹴って進み始める。

利輔の戸惑う声が聞こえたけど、諦めたのかしばらくして後ろでも水を蹴って進む音が聞こえた。

なかなか泳ごうとしない利輔に、最初は泳げないんじゃないかと思っていた。

でもそれは勘違いだったようで、結構な速さで進んでいる。

追いつかれそうになって慌て速度をあげる。

先に晋作達の元まで辿りつけば、何故か皆相撲を取っていた。

……水練に来たんじゃなかったっけ。

最初の目的と掛け離れた行動に苦笑い。

すると塾生の一人を投げ飛ばした晋作がこちらに気づく。

「何だ夕霧、結局来たのか」
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