悪魔な彼が愛を囁くとき

私達の1年半ってなんだったの?
ムカついて、悲しくて一晩中泣いた結果がこの顔だ。

「……無神経です。わかっていてもそこにふれないのが優しさなんじゃないんですか?」

「悪かったな…優しくなくて。お前に優しくするほど器が大きくないんだよ。……お前のプライベートはお客には関係ない。ヘマするなよ」

相変わらずの冷たい口調に

「わかってますよ」

ムキになって答えていた。

休憩室のドアが開き、パートさんの綾乃さんが声をかける。

「店長、お店あけましたよ」

「…今日もよろしくお願いします綾乃さん」

声色がコロッと変わって優しく微笑む店長にムカつく。

「はーい。頑張ります」

綾乃さんは小さくガッツポーズをしてお店へと行ったので、私も後に続こうかと店長の横を通り過ぎた。

「お前は、今日はセッターだ」

セッター⁈
キッチンとホールの中継係

キッチンの様子を見ながらホールに指示を出し、もちろんホールの状況も理解して、熱いうちに料理を出せるようにセットして次々と料理を出していく。

その場に留まり、指示するだけじゃなく自らもホールに出ていかなければならない。

簡単なようで難しいポジションだ。
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