悪魔な彼が愛を囁くとき

「頑張ってね…それじゃ、私は帰るわ」

「お疲れ様でした」

綾乃さんは小さなお子さんを保育園に預けている為、ランチ時間帯の3時までの勤務。

他のパートさんやアルバイトさんも3時までで、5時半から夜の営業まで2時間は休憩に入る私。

残りの30分は夜のバイトさん達とミーティングや夜の営業に向けてメニューの差し替えやテーブルの上をセッティングするのが仕事。

店内に出れば、最後の女性の2人連れのお客さんが会計を済ませ帰る所だった。

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています」

店長が玄関先まで出て、ドアを開けてあげてとびっきりの笑顔で一礼してお送りする。

私もその場で一礼だけするがきっと見えてないだろう。

イケメンにあんな風に微笑まれたら年齢関係なく頬が赤くなって彼に目が釘付けのようだ。

また来るわねと手を振り、おばさま達は帰って行った。

closeの看板を出して一旦お店を閉めてから私に気がついた店長。

「おかめ顔がまともになったな」

他に言い方ないんですか?

喉まで出かかった言葉を飲み込んで

「休憩入ります」

店長に声をかけキッチンへ戻った。
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