平凡な毎日に恋という名の調味料(スパイス)を
次の日からひよこ色一色で埋め尽くされたわたしのお弁当を見て、吉井さんは思いっ切り顔をしかめていた。
「いったいどうしちゃったの? この間までの、デパ地下真っ青の豪華弁当は?」
「ちょっと事情がありまして。あ、でもいろんな味があるんですよ。これは海苔をいっしょに巻いていて、こっちは鮭フレークを入れてみたんです」
基本をマスターしてからは、いろいろとバリエーションを試してみている。家の冷蔵庫の中は、卵でいっぱいだった。
「礼子さん! 明日のことなんですけど」
空気を読まずに大声を出しながら休憩室に入ってきたのは、言わずもがなの脩人くん。お昼を食べていたみんなの視線が、当然の如くわたしたちに集中する。
「ちょっっと! そんなに大きな声で言わないでよ。他の人が誤解するでしょう」
「どうしてですか? デートするのは本当でしょう」
なんのてらいもなくあっけらかんと言い放った台詞に、隣で吉井さんがお茶を噴きそうになってむせていた。
「だからそれが……」
「明日、家まで車で迎えに行きますから。社員名簿見てビックリですよ。あの定食屋のマンションに住んでたんですね」
人の話をろくに聞かずに話を推し進めていく。こいつが社長になったらワンマンになるに違いない、と思うと会社の将来が心配になってくる。
「だけど、お天気が――」
窓の外はあいかわらずの梅雨空で、天気予報でも降水確率は90パーセント以上だ。
「大丈夫って言ったでしょ。晴れますよ、絶対」
その自信はいったいどこからくるの?
入ってきたときと同じように軽やかな足取りで出ていく彼の後ろ姿に向けて、深いため息を吐きかける。
「それで。いつの間に、どういうことになってるの?」
どすの利いた声にびくびくとクビを巡らせれば、眉間に皺を刻んでいる。その向こうでも、興味津々のたくさんの視線がこちらを窺っているのがわかってゾッとした。
「……新入社員の遠足です」
的を射ないわたしの答えに、吉井さんは苦虫を何百匹とかみ潰したような顔をしているに違いない。
目を合わせるのが怖くって、ちょっと焦げができてしまった玉子焼きを飲み込むことに専念した。
「いったいどうしちゃったの? この間までの、デパ地下真っ青の豪華弁当は?」
「ちょっと事情がありまして。あ、でもいろんな味があるんですよ。これは海苔をいっしょに巻いていて、こっちは鮭フレークを入れてみたんです」
基本をマスターしてからは、いろいろとバリエーションを試してみている。家の冷蔵庫の中は、卵でいっぱいだった。
「礼子さん! 明日のことなんですけど」
空気を読まずに大声を出しながら休憩室に入ってきたのは、言わずもがなの脩人くん。お昼を食べていたみんなの視線が、当然の如くわたしたちに集中する。
「ちょっっと! そんなに大きな声で言わないでよ。他の人が誤解するでしょう」
「どうしてですか? デートするのは本当でしょう」
なんのてらいもなくあっけらかんと言い放った台詞に、隣で吉井さんがお茶を噴きそうになってむせていた。
「だからそれが……」
「明日、家まで車で迎えに行きますから。社員名簿見てビックリですよ。あの定食屋のマンションに住んでたんですね」
人の話をろくに聞かずに話を推し進めていく。こいつが社長になったらワンマンになるに違いない、と思うと会社の将来が心配になってくる。
「だけど、お天気が――」
窓の外はあいかわらずの梅雨空で、天気予報でも降水確率は90パーセント以上だ。
「大丈夫って言ったでしょ。晴れますよ、絶対」
その自信はいったいどこからくるの?
入ってきたときと同じように軽やかな足取りで出ていく彼の後ろ姿に向けて、深いため息を吐きかける。
「それで。いつの間に、どういうことになってるの?」
どすの利いた声にびくびくとクビを巡らせれば、眉間に皺を刻んでいる。その向こうでも、興味津々のたくさんの視線がこちらを窺っているのがわかってゾッとした。
「……新入社員の遠足です」
的を射ないわたしの答えに、吉井さんは苦虫を何百匹とかみ潰したような顔をしているに違いない。
目を合わせるのが怖くって、ちょっと焦げができてしまった玉子焼きを飲み込むことに専念した。