平凡な毎日に恋という名の調味料(スパイス)を
◇ ◇ ◇
翌朝。雨天を期待して起きてみたけれど、予報に反して雲の隙間に青空が覗くという奇跡が起きていた。
クビがかかっている交換条件だからと自分に言い聞かせ、渋々ながらに遠足のお弁当作りに取りかかる。
昨日、会社の帰りにスーパーで仕入れてきた食材と卵で、小さな冷蔵庫の中はぎゅうぎゅうだ。
ワンルームの申し訳程度についている狭いキッチンとわたしの腕では、手の込んだものは難しい。
とりあえず定番のウインナーだとかビーマンの肉詰めなどのガッツリ肉系を詰めておけば、男子的には問題ないだろう。
どうしてもボール型にしか握れないおむすびは、形をごまかすためにサッカーボールに見立てて、乾物売り場で見つけた型抜きの海苔を貼り付けた。
そして最後に時間をかけて丁寧に焼いた玉子焼きは、いままでで一番のできになった。
予想よりも大荷物になってしまったお弁当を持って、約束の時間少し前に下に降りる。と、エントランスの階段前に停まっている黒い乗用車。
タクシー、じゃないよね?
迂回しよう身体の向きを変えると、バタンとドアの音がした。
「おはようございますっ! どこ行くつもりですか」
「え? これ、脩人くんの車だったの!?」
田舎にいる定年間近のお父さんが、いつかは――と夢見る国産高級乗用車。
「まさか。親父に借りたんですよ」
「……だよね」
ホッとしつつもよく見れば、前後に若葉マークが付いている。まさか、ね?
「免許、いつ取ったの?」
「この春ですけど。あぁ、オレ、実技も筆記も一発合格だったから、任せてください」
免許取得以来、会社の軽自動車しか運転したことがないわたしに「しろ」と言われても困るけど。社長、よく貸し出したな。
「さぁ、乗って乗って!」
ピカピカに磨かれた助手席側のドアを大きく開く。本革シートに身を沈めれば、最新型のナビが目に入った。
そういえばこの子っておぼっちゃまだったっけ。
いまさらながらに再認識していると、運転席に戻った彼は、手馴れた動作ナビに行き先を入力して発車させる。決して車の性能だけではないスムーズな運転に、素直に感心させられた。
翌朝。雨天を期待して起きてみたけれど、予報に反して雲の隙間に青空が覗くという奇跡が起きていた。
クビがかかっている交換条件だからと自分に言い聞かせ、渋々ながらに遠足のお弁当作りに取りかかる。
昨日、会社の帰りにスーパーで仕入れてきた食材と卵で、小さな冷蔵庫の中はぎゅうぎゅうだ。
ワンルームの申し訳程度についている狭いキッチンとわたしの腕では、手の込んだものは難しい。
とりあえず定番のウインナーだとかビーマンの肉詰めなどのガッツリ肉系を詰めておけば、男子的には問題ないだろう。
どうしてもボール型にしか握れないおむすびは、形をごまかすためにサッカーボールに見立てて、乾物売り場で見つけた型抜きの海苔を貼り付けた。
そして最後に時間をかけて丁寧に焼いた玉子焼きは、いままでで一番のできになった。
予想よりも大荷物になってしまったお弁当を持って、約束の時間少し前に下に降りる。と、エントランスの階段前に停まっている黒い乗用車。
タクシー、じゃないよね?
迂回しよう身体の向きを変えると、バタンとドアの音がした。
「おはようございますっ! どこ行くつもりですか」
「え? これ、脩人くんの車だったの!?」
田舎にいる定年間近のお父さんが、いつかは――と夢見る国産高級乗用車。
「まさか。親父に借りたんですよ」
「……だよね」
ホッとしつつもよく見れば、前後に若葉マークが付いている。まさか、ね?
「免許、いつ取ったの?」
「この春ですけど。あぁ、オレ、実技も筆記も一発合格だったから、任せてください」
免許取得以来、会社の軽自動車しか運転したことがないわたしに「しろ」と言われても困るけど。社長、よく貸し出したな。
「さぁ、乗って乗って!」
ピカピカに磨かれた助手席側のドアを大きく開く。本革シートに身を沈めれば、最新型のナビが目に入った。
そういえばこの子っておぼっちゃまだったっけ。
いまさらながらに再認識していると、運転席に戻った彼は、手馴れた動作ナビに行き先を入力して発車させる。決して車の性能だけではないスムーズな運転に、素直に感心させられた。