君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
その子はクラスの中では、地味で目立たない存在だったらしい。
でも調査の結果、とくにイジメを受けていたというわけでもないらしく。
ここ最近、どうも悩み事があったみたいで、おそらくそれが自殺の原因だろう。……ということだった。
詳しい事情まではわかんないけど。
社会的に問題が大きくなりがちなイジメが原因じゃなかった事で、事態はスルスルと収束していった。
テレビ局も来なくなって、インタビューされた子が得意気にその話をする事もなくなって。
そうなると校内を覆っていた奇妙な興奮は、あっという間に静まっていった。
もちろんまだザラつく空気は漂っているけど、少なくともあたし達は、それまでの日常とまったく変わらない日々に戻っていた。
「奏、やっぱり一緒に帰ろうよ。いまお母さんに電話するからちょっと待っててね」
その亜里沙の声に、あたしはハッと我に返った。
そうだ! あたし、こんなことしてる場合じゃない!
タイミングだよ! タイミング!
凱斗に先に帰られたら大変だ! 今すぐ生徒玄関に向かわなきゃ!