シャンパントリュフはキスの魔法
 自販機コーナーのソファに座って、手提げ袋を開けた。長方形の箱を取り出して膝の上に置き、細いリボンをつまんでそっと解く。包装紙のシールを剥がしてトリュフのフタを開けた。

「奮発したのになぁ……」

 八個入りのトリュフをしげしげと眺めたとき、箱の上に影が落ちた。

「うまそうだな」

 低い声に驚いて肩越しに振り返ると、すぐ前に土井主任の顔があった。距離の近さに頬がかぁっと熱くなる。

「えっ、あ」
「それ、誰かにあげるつもりだったの?」

 切れ長の目で見つめられて、ますます顔が熱くなる。

「あの、いえ」

 正直に答えられるはずがない。だって、主任は誰からも受け取るつもりはないって言ってたんだから……。

「あ、自分で食べようと思って! 開発プロジェクトが終わった自分へのご褒美ってことで!」

 あわてて一粒つまんだとき、主任が言った。

「じゃあ、俺もご褒美、もらおうかな」

 え、と思ったときには、私がつまんだトリュフに主任がぱくりと食いついていた。

「え、あの」

 指の間からトリュフが消え、指先に主任の柔らかな唇が触れる。
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