諸々の法は影と像の如し
「別に俺のことなど考えんでいい」

 さらっと言う。

「ほれ。本人が、このように言うておる。ささ、とっとと鬼を呼び出さぬか」

 わくわくと、魔﨡が惟道に言う。
 それに、惟道もあっさり小刀を抜いた。
 焦っているのは章親だけだ。

「わーーっ! ちょっと待って! ていうか、君ももうちょっと自分のこと考えて!」

 堪らず章親が、惟道の腕を掴む。

「い、今は宮様もおられるんだ。そんな御前で滅多なことは出来ないよ。とにかく穏便に済ませられるのであれば、それに越したことはない。てことで、蘆屋屋敷に案内してくれるかな」

 一気に言ったことで、今後の方針が決まった。
 とにかく今は、惟道に施された呪について調べる。

 鬼を滅して惟道に影響がないとしても、ではその鬼を滅したところで額の呪が消えるとも思えない。
 そのままだと他の鬼が引っ張られる、とかなら意味がないし、だからといって無理やり呪を消していいものかもわからない。

 この術そのものを調べる必要があるわけだ。
 そのために、蘆屋屋敷に行く。

「早く終えてしまおう。ずっとここに宮様を足止めしておくわけにもいかないし」

「そうねぇ。内裏に帰りたいわけじゃないけど、つまんないわ」

 今までの章親らのやり取りにすっかり飽きてしまって、毛玉と遊んでいた宮様が、呑気に頷いた。
 魔﨡といい宮様といい、女性は肝が太い、と内心思い、章親は立ち上がって惟道を促した。
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