29歳、処女。
本当に失礼な人だ。


睡眠時間をけずってまで鏡の前でああでもないこうでもないとコーディネートを考えてきたのに。

夢にまで見るくらい、真剣に悩んで選んだのに。


そんな思いが顔に出てしまったのか、喜多嶋さんが「なんか不満そうだな?」と口角をあげる。



「まあいい。今日、お前は生まれ変わるんだからな」



わけがわからず、私は目を見開いた。



「生まれ変わる………?」


「ああ、そうだよ」



喜多嶋さんがにやりと笑う。



「俺がお前を生まれ変わらせてやるんだからな」



そう言って喜多嶋さんは私に向かって手招きをして、アーケード街に向かってすたすたと歩き始めた。



「あっ、ちょっと待ってください!」



あわてて追いかけながら、私はさっきの喜多嶋さんの言葉を心の中で反芻する。



『俺がお前を生まれ変わらせてやる』



知らず、胸が高鳴った。


生まれ変わる。

なんて魅力的な言葉だろう。



そのとき、すれちがった女の人に目が行った。


つやつやの長い髪を風になびかせ、きれいにお化粧をした顔に、明るく弾けるような笑顔を浮かべている。


誰もが思わず目で追ってしまいたくなる、すごく魅力的な人。



そうだ。

私は、生まれ変わりたかったんだ。


こういう女性に。


奥手で臆病な自分から、生き生きと輝く女性へ。




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