29歳、処女。
「………喜多嶋さん!」



気がついたら、大声でそう呼んでいた。


喜多嶋さんが足を止めて、驚いたように目を見開いて振り向く。



小走りで追いついて、喜多嶋さんの目の前に立ち止まり、ぱっと見上げた。



「なんだよ?」


「あの………よろしくお願いします!」



精一杯の誠意を込めて、頭を下げる。


喜多嶋さんが「は?」と声をあげた。



私はゆっくりと顔をあげ、じっと喜多嶋さんの顔を見つめる。



「私、生まれ変わりたいです。だから、喜多嶋さんの言う通りにします。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」



一気に言い終えると、喜多嶋さんはしばらく無言で私を見つめ返してきた。


それから、にっと笑って、



「いい度胸、してるじゃないか」



と満足げに言った。



「じゃ、ここからは、俺に逆らうのは絶対禁止だ。できるか?」



―――『できるか』と訊かれたら、答えは『できます』とか『できません』とかじゃなく、『やります』だぞ。


喜多嶋さんの口癖を思い出して、私は心の中で笑った。



「はい、やります。ご指導、お願い致します」




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