29歳、処女。
「………喜多嶋さん。本当にいいんですか? こんな………店の人に迷惑なんじゃ」



店の雰囲気を壊さないように小声で話しかけると、喜多嶋さんがちらりと視線を落としてきた。



「なに言ってんだよ、いいに決まってるだろ。俺が連れてきたんだから」



どうしたらこんなに自分に自信が持てるんだろう。


私なんか、何ひとつ自信のもてることなんかないのに。


喜多嶋さんはいつも自信に満ち溢れて、きらきらしていて、眩しいくらいだ。



―――自信を持ちすぎているっていうのも、どうかと思うけど。




私が小さく息をつくと、さっきの店員さんが戻ってきた。



「お待たせいたしました、喜多嶋様。用意ができましたので、中へどうぞ」



そう言って通されたのは、シンプルだけど高級そうな家具で統一された個室。


服屋さんにこんな部屋があるなんて、まったく知らなかった。



「どのようなものをお持ちしましょうか」



店員さんに訊かれて、喜多嶋さんがにっと笑う。



「とりあえず、こいつに合うサイズのもの、どんどん持ってきてもらえます?」


「はい、かしこまりました」




< 29 / 97 >

この作品をシェア

pagetop