29歳、処女。
どうすればいいか分からずに、部屋の真ん中で固まっている私のまわりに、店員さんたちが次々と服や小物類、アクセサリーなどを運んでくる。



透けるレース地のワンピース。

きらきら光る飾りがついたニットのカーディガン。

胸元が大きく開いた薄い生地のカットソー。


黒い革のミニスカート。

花柄のスキニージーンズ。

スリットの入ったロングスカート。


スエードのハット。

カシミアのマフラー。

真っ赤なエナメルのピンヒールの靴。

金色のチェーンのネックレス。



目が回りそうだった。


ファッション雑誌に載っていても、私なんかに着こなせるわけがないと見て見ぬふりをしてきたような、きらきらとしたきれいなものたち。



「………無理ですよ、やっぱり」



思わず呟くと、喜多嶋さんが眉間に深いしわを刻んだ。



「無理って言うな」


「だって………」


「『だって』禁止!」


「………でも」


「『でも』も禁止!」


「………はい、すみませんでした」



やっぱり怖い。


ここで逆らったら、どうなるか分からない。




「あのなあ、雛子」



素直に謝ったのがよかったのか、喜多嶋さんの声が少し柔らかくなった。



「お前の服は、スキがなさすぎるんだよ」





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