29歳、処女。
その瞬間、顔から火が出そうに熱くなる。



「やめてください!」



私は思わず顔を背けた。

正面から見られるのは耐えられそうになかった。


ああもう、私の顔って、なんでこんなにすぐ赤くなっちゃうんだろう。



「なに照れてんだよ」



喜多嶋さんがくくくっと笑う。



「………からかわないでください」


「からかいたくなる顔してるお前が悪い」


「………ひどい」



私はマグカップをサイドボードに置き、両手で顔を覆った。



「自分でも嫌なんですよ、この赤面症………ほんと恥ずかしい」


「ああ、そういえばお前、入社してきた日の自己紹介のときも、顔真っ赤だったな」


「自覚あります、ああいうの苦手なんですよね」



私は昔からすぐに顔が赤くなるたちで、学校の自己紹介なんかも嫌で嫌で仕方がなかった。


少し緊張すると真っ赤になってしまう、この憎らしい顔。



「ま、いいんじゃねえの? 別に実害あるわけじゃないし」


「ありますよ、実害。小さいころはいつも男子に馬鹿にされてたし、女子にも『りんごちゃん』ってからかわれてたし」


「そりゃ、可愛がられてたんだろ」



喜多嶋さんがさらりと言った。



「ええ? 可愛がられてた? 違いますよ……本当に馬鹿にされてたんですって」


「真実はどうか知らんが、そう思っとけばいいだろ」


「………ほんと、ポジティブシンキングですね、喜多嶋さんって」


「それが俺のモットーだからな」




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