29歳、処女。
「髪型までガード固いんだよな」


「えっ、髪型………ですか」



またもや思いがけない言葉に、私は目を丸くした。


私の髪は、いわゆるセミロング。


数年前まではカラーもパーマもしていなかったけど、

大学時代の友達と一緒に美容院に行ったとき、その子に誘われて、勇気を出して少しだけ色を入れ、ゆるいパーマを当ててみた。


そのときはずいぶんと大人の女性という感じに変わったと思ったけど、まだ足りなかったのだろうか。



「なんつうか、真面目すぎるんだよな。きちっとしすぎっつうか」



鏡の中で目が合う。


喜多嶋さんは真剣な眼差しをしていた。



「たとえばさ、もっとこう、こんな感じで………」



喜多嶋さんの手がふわりと私の髪を後ろでたばねる。


指先がかすかに首筋をかすり、肩が震えてしまった。



喜多嶋さんがくすりと笑い、「ごめん、ごめん」と囁いた。


その響きにも胸が弾んでしまう。


私は動揺で目を伏せた。



喜多嶋さんの手が今度は前に回ってくる。


大きな掌が視界の端にうつった。


軽く前髪に触れられる。



「こうやったら、だいぶ雰囲気変わるんじゃないか」



喜多嶋さんの言葉に、目をあげる。



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