逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 読んだ本の感想を言い合い、一ヶ月もした頃にようやく映画を見に行く約束をしたような、本当にゆっくりとした友人関係だったが、その映画を見る約束をした日、待ち合わせの場所で彼に言われたのだ。


「志倉さん、ちょっと複雑な家の子なんだね」
「え?」


 いきなり、包丁で、胸を一突きされたような気がした。


 悪びれることもなく、自分の家は旧家であること、沙耶と自分では長く付き合っても不幸になるだけだと言い放ち、その場を立ち去ってしまった。

(私のことをわざわざ調べたの?)

 ショックの後は、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。

(好きでもない男性にこんな理由で振られるなんて、思ってもみなかった……。最低だけど、あんな考えを持つ人だとわかってよかった。)


 そう何度も自分に言い聞かせたけれど、好きでもない男性だからこそ、余計その怒りは行き場をなくし、結局自分に問題があるのだと、思うようになった。

 それまで生きるのに精一杯で考えたこともなかったが、結婚は家と家との問題なのだと思い知らされた。

 もちろん沙耶は結婚など意識したことはなかったが、そんな目で見られるくらいなら、恋愛などしないに越したことはないと心に決めてしまった。

 父親のこともあって男性不信気味だった沙耶は、このことで決定的に男性と関わるのを避けるようになったのである。



------



< 100 / 322 >

この作品をシェア

pagetop