逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「あっ、志倉さん! 待ってください!」
だが沙耶は神尾の制止を振り切って、秘書室を飛び出していた。
足早にバックヤードに向かいながら、沙耶は唇をかみしめる。
名刺を返せたのはよかったが、それ以上に自分がダメージを受けていると、沙耶ははっきりと感じていた。
(なんて人……神尾さん、ものすごく勘が鋭くて、驚いた。)
『もしかしたら以前、そういったご苦労があったのでしょうか』
心臓が止まりそうになった。
神尾の言葉は、半分だけ当たっていたのだ。
(そう。苦労なんてしてない。恋もしていない。何かが始まりかけて、そして何も始まらないまま終わっただけ。そしてただ一方的に傷つけられただけ……。)
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ソルシエールに入ったばかりの頃、沙耶は派遣先のそばにある上場企業の男性社員と、親しくなった。
昼休みに公園でお弁当を食べながら本を読んでいる沙耶に、声をかけてきたのが彼だった。