逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 午後三時。いつものようにカートを押して常務室に入る。


「失礼いたします」


 このところの基の目が気になる沙耶だったが、今日の基は黙々と仕事に勤しんでいるらしく、パソコンのディスプレイから視線が動かなかった。


(よかった……。)


 ホッとしつつ、沙耶はいつものように常務室のクリーニングを始める。

 換気のために窓を開けながら、空がねずみ色になっているのが目に入った。なんとなく湿気も多いような気がする。


(天気が崩れそうね。雨が降るのかも。)


 窓に曇り止めを塗っておいたほうがいいかもしれない。

 カートから専用のスプレーを取り出し、タオルに吹き付け、窓辺に立った。

 その瞬間である。

 沙耶の背後から、二本の腕が突然伸びてきて、窓ガラスに押し付けられた。

 ダンッと大きな音がし、必然的に沙耶はその腕の中に閉じ込められて、驚きのあまり硬直してしまった。



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