逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「……っ、くっ、うっ……」


 沙耶は手の甲で口元を押さえ、嗚咽を必死にこらえているが、涙は後から後から溢れて、止まらない。

 少し大きめのユニフォームの上からでもわかる、彼女の華奢な体がブルブルと震えている。


 コーヒーを床にぶちまけたとき、そして無理やりキスしたときでも、沙耶はこんな風に泣いたりしなかった。

 そこでようやく、自分は彼女の誇りを傷つけてしまったのだということを、思い知ったのである。


「沙耶……っ」


 辛かったり、苦しかったり、そんなものを恋と呼ぶなど、基は知らなかった。

 だが今、生まれて初めて思い知らされている。

 時間を撒き戻せるなら、どんなものでも差し出すと。命だって惜しくはないと本気で思っている。



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