逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 常務室の真ん中には沙耶の仕事道具であるカートが置き去り。窓辺にはタオルとスプレーボトルが転がっている。

 まさか基に限って女性に無体なことをするとは思えなかったが、この惨状はどういうことだ。


「基様……」


 神尾の呼びかけに、棒のように立ち尽くしている基が、ゆっくりと顔を上げた。


「湊……」


 そこには、幼馴染だからこそ知っている、素の基が立っていた。


 成長するにつれ、エール化粧品の御曹司として様々な仮面をつけてきた男である。
 当然楽しいことばかりではないが、基はそれをすべて乗り越えてきたのである。


 その仮面をすべて落としてしまった基を見て、神尾は見てはいけないものを見てしまった、そんな気がした。


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