逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
料理で手を動かすのも、沙耶は好きだった。
ある意味掃除と通ずるものがあるのかもしれない。気分が切り替わる。
いつまでも落ち込んでいては、日々の生活に差し障りが出る。
頼ることができる人間が側にいない沙耶は、昔からそうやって気持ちを切り替えてきたのだ。
圧力鍋に材料を放り込み、しゃがみこんで戸棚を覗き込む。
だがしかし、そこにトマト缶はなかった。
「あれっ……」
中まで一生懸命探したが、ない。
予備があると思っていたがどうやら使ってしまっていたらしい。
トマト缶がなければ、ただの野菜スープでもいいのだが、すっかり沙耶の口はミネストローネを求めていた。
財布を手にとって、ロングカーディガンを羽織る。
アパートから歩いて数分のところにスーパーがあるのだ。
愛用している日本野鳥の会の赤い長靴を履き、傘を持って外に出た。